公益財団法人日本書道教育学会

伊東市書道教育特区で「書道科」開講

〜日本書道藝術専門学校の「子ども書道教室」が契機に〜伝統文化・芸術の学習と心の教育を目指して

平成19年3月29日、内閣府の発表により、新たに静岡県駿東郡長泉町が「書道教育特区」に認定されました。
詳しくはこちらをご覧ください。

平成17(2005)年11月22日(火)に内閣府が発表した「構造改革特区」の認定において、静岡県伊東市が「書道教育特区」に認定され、平成18年4月18日より 市内の小学校で「書道科」の授業が開催されました。
そこで、今までの本会の取り組みと同市における特区認定のあらまし、今後の展望について、ご紹介します。

伊東市南小学校で授業開始

「書道科」授業を見学される佃 弘巳伊東市長佐藤 悠前教育長・丸井 重孝伊東市立東小学校長

「書道科」授業を見学される佃 弘巳伊東市長
佐藤 悠前教育長・丸井 重孝伊東市立東小学校長

書道教育特区の認定により平成18(2006)年4月より同市の南小学校が特区研究開発校となり、現行課程では3年生から国語科の「書写」として行なわれている毛筆による書道指導に加え、1・2年生の課程で「書道科」の授業が始まりました。

南小学校では(学)日本書道藝術専門学校より書道師範取得者の派遣をうけ、派遣された講師が担任教師とチームを組み、年間34?35時間(週1時間程度)「書道」の授業を行っています。学習内容としては、漢数字(一、二?十まで)の学習と片仮名の先行学習、そして簡単な漢字について練習しています。

特区内では今後、指導方法の検討を行ない、市内の小学校を対象に拡大し、書道教育の充実を図っていく方針です。

「書道教育特区」認定書授与式

小泉純一郎元内閣総理大臣・安倍晋三元官房長官・中馬弘毅元国務大臣(特区担当)らと記念写真に収まる佃 弘巳伊東市長

小泉純一郎元内閣総理大臣・安倍晋三元官房長官
中馬弘毅元国務大臣(特区担当)らと
記念写真に収まる佃 弘巳伊東市長(後列中央)

平成17(2005)年12月6日、内閣府による構造改革特区認定書の授与式が、首相官邸にて行なわれました。小泉首相、安倍官房長官らが出席する中、伊東市の佃弘巳市長が、認定書を受け取りました。今後、書道教育特区としての伊東市の更なる発展が望まれます。

書道の教育特区は全国初

「書道教育特区」は、平成17(2005)年10月に静岡県伊東市が提出した申請に応じる形で、同年11月22日、内閣総理大臣の認定を受け、伊東市に誕生しました。教育に関する特区は国内に数あるものの、書道教育の特区は初めての試みとなります。

「特区」は、正式名称を「構造改革特別区域」と言い、小泉内閣の郵政民営化に次ぐ意欲的な政策です。地方公共団体や民間企業等の自発的なアイデアで、その地域の特色に応じた特例を設け、今まで全国一律だった国の制度を地域の特色に合わせてその地域限定で改革し、改革が成功すればその事例を全国に広めていこうとするものです。

教育特区とは

特区には「農業特区」や「生活福祉特区」など多様なものがありますが、中でも「教育特区」は認定数も多く、このたび伊東市が認定されたのもこれに当たります。

「教育特区」とは、これまで学習指導要領等の教育課程の基準によらない教育課程の編成・実施が出来なかったものを地域の特色を生かした人材の育成等のため各地域でモデル校を設けて出来るようにするなど、実験的に行なわれる教育の実施区域です。そろばんを小学校の授業に取り入れる兵庫県尼崎市の「そろばん特区」、小学校に「日本語科」を設け日本語能力の向上を図る東京都世田谷区の「日本語特区」など、教育特区は様々に工夫をこらし、現在では141件認定され、全国で実施されています。

また、現在、文部科学省において学習指導要領等の教育課程の基準の見直しが進められており、その中で、こうした特区については、その取組内容を勘案し、平成20年度からの実施を目途に全国展開のための措置をとることとされています。

伊東市の試みが成功すれば、やがて同じような考え方が全国各地の地方自治体に拡がり、毛筆書道復興の契機となると考えられます。

契機となった子ども書道教室

伊東市の子供たちと本会顧問久世公堯前参議院議員

伊東市の子供たちと
本会顧問久世公堯前参議院議員(中央左奥)

日本書道教育学会では創設者である石橋犀水博士の書道理念を引き継ぎ、特に書道教育は幼児期にこそ行なわれるべきであると、小学1・2年生の毛筆書道の復活を強く願ってきました*1

そうした状況の中で、特区申請にあたっての契機となったのは、静岡県伊東市にある学校法人扶桑学園日本書道藝術専門学校で平成17(2005)年5月から週に1回開かれている「子ども書道教室」です。この教室は、子ども達が安心して活動できる場の整備を目的に文部科学省が推進している「子どもの居場所プラン」の一環で、地域の小学生を対象に、師範免許を持った学生達がボランティアで書道を教えるものです。開講1回目から当初の予想を大幅に上回る65名の小学生が集まり、現在も90名を超える子どもが登録をし、毎週、熱心に書道を学んでいます。

これは、地域の子ども達と保護者の書道を学びたい、学ばせたいという強い要望の表れであり、また古くから文化事業が盛んであった伊東市民の書道教育に対する関心の強さが示されていると言えます。今回の申請は、こうした市民と子ども達の声を背景に行われました。

書道を通して人間形成を

この「書道教育特区」が目指すところは、1つには、世界に例を見ない造形芸術である書道教育を、前述のように小学校の指導カリキュラムに組み込むことで、豊かな情操を育み、日本の伝統文化・芸術の知識を身につけ、将来国際社会において日本人としての誇りを持って国際協調に努めることのできる人材を育成することにあります。これは、書を書く過程で自然の内に習得できるのです。

また、不登校や非行などが問題となっている学校教育において、集中して書道に取り組むことで礼儀・集中力・冷静な心を身につける効果も見込まれます。その事は、「子ども書道教室」で書道を学ぶ子ども達の様子からもうかがわれます。

筆を持って字を書く時、子ども達は自然と背筋を伸ばします。それは、姿勢を正し筆を立てて書かないと強い線は書けないからです。墨で書いた線は消すことができません。また、途中で飽きて書くのをやめてしまったら半紙1枚でも完成させることはできません。集中しなければ書き上げることができないのです。集中し緊張して、息が苦しくなりながら書いている内に自然と呼吸に合わせた筆運びができるようになります。こうして書かれた子ども達の作品は生き生きとして生命感にあふれています。書道を学ぶことで子ども達は、自然に創造力や感性、集中して物事をやりとげる力を養うことができます。そして養われた力を学校生活の中だけでなく生活全般の中で伸ばしていくことも「書道教育特区」の大きな目標の1つであると言えます。

この「書道教育特区」認定の力となったのは、伊東市民の書道教育への要望と受け入れ校となる南小学校校長の理解、またそれをうけとめ、特区認定に向けて努力した伊東市長はじめ市当局の強い実行力、子ども達への愛情と熱意にあふれる日本書道藝術専門学校の書道指導者達でした。この3者によって、今回の「書道教育特区」は実現したと言えます。

伊東市での試みを通じて書道の重要性が全国に伝わることを願い、本会はこの「書道教育特区」を全力で支援していきたいと考えています。

*1 本会では3年前より学校教育現場での正しい書道の指導を目指して、厚生労働省推進の「学校いきいきプラン」に賛同してきました。全国の師範取得会員たちに呼びかけ、「補助教員認定証」を発行してボランティアで小・中学校における書道指導への参加を願いました。その結果、現在では250名あまりの希望者が登録参加を申し出、全国各地の小学校で補助教員として書道の指導にあたっています。
さらに、本年より文部科学省推進の「子どもの居場所プラン」についても積極的参加を行なっており、平成18(2006)年度4月より、本会の念願であった「書道教育特区」への実施に結実しました。

※構造改革特区については、構造改革特別区域推進本部ホームページをご覧下さい。

<ご連絡先> 内閣官房構造改革特区推進室
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-23-7 虎ノ門第23森ビル
TEL.03-5521-6611(直通)

※ 伊東市の取り組みについては伊東市ホームページをご覧下さい。